海風の如く
その後ろ姿を見送る
小さな子供──まだ力のない、真っ白な未来を持つ存在
戦争なんていうモノにその未来を巻き込まないようにしたい
華蓮は強く思う
「あの……今の話は本当なんどすか?」
人集りも収まったころに一人の女性が話しかけてきた
特に身なりがボロボロなわけでも、ひどく疲れた顔をしているわけでもない
「もちろんですよ、武士に二言はありません
何か御用ですか?」
華蓮はにこやかに返す
すると目の前の女性は何かを決意したように華蓮と沖田を見た
「あのっ……………」
─────────
──────
「土方さん土方さん!!!」
──スパンッ
「総司っ!!!
てめぇ、これで何度目だっ!!!」
バタバタと駆け回り、屯所の奥の方にある土方の部屋の襖を迷いもなく開ける
特別何かがない限り、これは沖田の習慣だと言ってもいい
「………後ろにいるのは蓮か
巡察中になんかあったのか?」
そんな行動にも慣れたのか、土方はいつものように一喝すると冷静になる
「蓮さんが一緒だとそういう考えに辿り着くんですねぇ」
「うるせぇ、蓮はお前と違ってふざける目的で部屋に入ったりしねぇんだ」
「そうなんですか……じゃあ仕事以外の時、華蓮と呼ぶのはどういう目的です?」
──なっ、なんで気づいてるの!?
土方は仕事以外で二人っきりになると、男装時の名ではなく、本名を呼んでくれる
それは華蓮自身が望んだことらしいのだが、本人はいつそれを伝えたのか、なんと言ったのかも覚えていない
嬉しいのは間違いないから、それに甘えていたのだが……
「おっ、沖田さん……
どうしてそれを……………?」
土方は驚いて目を見開いたままだ