海風の如く




その後ろ姿を見送る



小さな子供──まだ力のない、真っ白な未来を持つ存在



戦争なんていうモノにその未来を巻き込まないようにしたい



華蓮は強く思う







「あの……今の話は本当なんどすか?」



人集りも収まったころに一人の女性が話しかけてきた



特に身なりがボロボロなわけでも、ひどく疲れた顔をしているわけでもない




「もちろんですよ、武士に二言はありません
何か御用ですか?」



華蓮はにこやかに返す



すると目の前の女性は何かを決意したように華蓮と沖田を見た




「あのっ……………」











─────────

──────



「土方さん土方さん!!!」



──スパンッ



「総司っ!!!
てめぇ、これで何度目だっ!!!」



バタバタと駆け回り、屯所の奥の方にある土方の部屋の襖を迷いもなく開ける



特別何かがない限り、これは沖田の習慣だと言ってもいい



「………後ろにいるのは蓮か
巡察中になんかあったのか?」



そんな行動にも慣れたのか、土方はいつものように一喝すると冷静になる



「蓮さんが一緒だとそういう考えに辿り着くんですねぇ」



「うるせぇ、蓮はお前と違ってふざける目的で部屋に入ったりしねぇんだ」






「そうなんですか……じゃあ仕事以外の時、華蓮と呼ぶのはどういう目的です?」







──なっ、なんで気づいてるの!?




土方は仕事以外で二人っきりになると、男装時の名ではなく、本名を呼んでくれる



それは華蓮自身が望んだことらしいのだが、本人はいつそれを伝えたのか、なんと言ったのかも覚えていない



嬉しいのは間違いないから、それに甘えていたのだが……





「おっ、沖田さん……
どうしてそれを……………?」



土方は驚いて目を見開いたままだ






< 8 / 126 >

この作品をシェア

pagetop