海風の如く
「ところでよ、蓮、お前なんか貰ったのか?」
永倉がひょいっと顔を出す
「えっ、どういう意味ですか?」
「土方さんからなんか貰ったのかって聞いてんだよ」
言い出した永倉はもちろん、原田もにやにやと華蓮を見下ろす
「……綺麗な鏡をもらいました」
『へぇ』
言わなければいけないような状況で仕方なく答えると、二人揃って同じ返事をした
そこで華蓮はあることに気づく
「もしかして、原田さんを待っている時に永倉さんが聞いてたのはわざとですか?」
「ははっ、さすが蓮、ご名答だ
実は土方さんもこっそり後をつけていたはずだぜ、途中まではな」
要するに、あの会話を聞いた後、土方は鏡を買いに行った、ということだろう
土方はそれも聞くようにと、永倉に指示していたのだろう
「……それなら、直接聞いてくれればちゃんと答えたのに………」
「まあまあ、土方さんもお前に内緒でやりたかったんだろ
俺らだってあんまりにも土方さんが面白いからこの話に乗ったんだ」
確かに、普段鬼のような表情で隊を仕切る土方がそんな頼みをするとなれば、永倉たちもそう思うに違いない
「だな、あんな土方さんが見れるなら何度やったっていいぜ」
「……それ、本人に知られないようにして下さいね」
こんなこと、土方が知れば、間違いなく雷が落ちる
「お前ら、そうやって俺をコケにしてたわけだ」
───!!
『げっ、土方さん!!』
──あーあ
土方は地獄耳なのだ
このタイミングで現れても不思議ではない
「いやっ、その、なぁ?」
「別に、コケにしてなんか」
誤魔化しても、もう遅い
土方の額には青筋が浮かんでいた
「そうやって笑えないくらい、隊務増やしてやる」
『………』
無言でチラリと華蓮を見る永倉と原田
華蓮はため息を一つついた
「土方さん、今回はお二人のおかげで私はすごく嬉しいサプライズを貰ったので許してあげて下さい」
「さぷ、らいず?」
「あ、えっと、私に内緒でいろいろ嬉しいことをしてくれたこと、ですよ」
華蓮はふわりと笑う
「………
今回は、俺も感謝してる
お前ら二人とも、ありがとな」
土方は後ろ向きでそれだけ言うと、足早に去った