海風の如く
土方がいなくなったのを確認すると、二人はすごい勢いで笑い始めた
「なっ、なんですか!?」
「いや、だってなぁ
色目使ってる上に、完全に尻に敷いてるみてぇで、女房かと思ったぜ」
原田はなんとか声を出して言うが、永倉はそれすらできない様子
「なっ………
土方さんを尻に敷くなんてできるわけないじゃないですか」
仮にも、土方は新撰組の副長で、華蓮は小姓なのだ
尻に敷くなんてとんでもない
「まあ、あの感じだと、土方さんも相当蓮に惚れ込んでるよな、新八」
「だな、それは間違いねぇよ」
笑いが収まったと思いきや、二人揃ってニヤニヤと華蓮を見る
「もうっ、次は助けてあげませんからね!」
なんだか恥ずかしくなった華蓮は、そう言い放つとその場を後にした
部屋に戻ると土方の気配がないのを確認して、押し入れの奥をあさる
出てきたのは、華蓮がこの時代に来た時に持っていた荷物だ
土方には二度と使わないと言ってしまったから、彼にバレないように、最近はこっそり出している
理由は───もちろん一つだ
華蓮は数学とかかれたノートを取り出し、ページをめくる
途中までは数字が並んでいるが、あるところを境にビッシリと文字が並んでいた
そう、これから起こる出来事を書き出すことにしたのである
筆箱からシャーペンを出し、カチカチと鳴らすと、また懐かしいような気分になった
数ヶ月前、タイムスリップして以来握っていなかったシャーペンを握った時ほどではないが安心感を覚える
──もうこっちに来てからだいぶ経っているし、忘れていることも多いかもしれないけど……
これ以上忘れる前に───
そう思い、一人で時間がある時は書くようにしている
これから起こることだけではなく、具体的にどうすべきか書ける所は書き込んでいた