海風の如く
「……なんとも奇妙な話じゃ」
華蓮の身に起こったことと決意を一通り話すと坂本はゆっくりと呟いた
華蓮が未来から来た、ということもなかなか信じなかった中岡は固まっている
「未来ではこんな力は当たり前なんか?」
「いえ、全く
私もその時はとても驚きましたし、今もこの力に飲み込まれることが怖いです」
こんな魔法みたいな力を持つことが、当たり前になんかなるわけない
正確には神様の力であるが、そんなこと関係なしに、この時代の人にとっても、未来から来た華蓮にとっても未知なことに変わりはない
「………じゃが、今の話を聞いて思い立ったことが一つだけある」
坂本の顔つきが険しくなり、彼は中岡と目を合わせ、頷いた
「何ですか……?」
その様子から察するに、きっといい話ではない
「華蓮があのどんどん焼けの火を消した……それは今の話でよくわかった」
華蓮も頷く
「……だが、おかしいと思わんか?
おまんらが警戒していたのにも関わらず、火の回りが早かったこと」
その時の光景が脳裏によみがえる
永倉が張っていたのに、火はあっという間に広がったのだ
そして、坂本は続ける
「わしは、その時おらんかったから、詳しいことはわからん
じゃが、事件後の長州をちょっとばかし調べてみた」
「っ……何かわかったんですね?」
坂本は勘がいい
そして、華蓮が踏み込めないような場所にまで踏み込むことができるのだ
「あれだけの火事を起こしていたのに、長州が調達していた火薬はほとんど使われておらんかった……」
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