海風の如く
「どうしても何も聞こえてきちゃっただけですよ……」
沖田は黒く笑う
──絶対盗み聞きだなぁ
どのようにしているのかは知らないが、沖田は屯所内のことをほとんど把握している
もしかすると、観察方の山崎よりも鼻が効くのかもしれない
「もう、沖田さんは…………
って、それより……土方さん
巡察中に思わぬ情報が入りまして……」
これ以上続けても時間の無駄だと判断し、話を変えた
「……重要な話なら、幹部を集めた方がいいか?」
華蓮の表情で事態を悟ったのか、土方も眉をひそめる
「そうですね……その方が良さそうです」
程なくして、一番隊と交代で巡察に行った藤堂以外の古株幹部が広間に揃った
華蓮がいる時は他の幹部は呼ばないようにしているため、試衛館のメンバーのみだ
「まず、先ほどの巡察の報告からします」
一番隊の組長である沖田は今日の町の様子を軽く説明する
町自体に大きな問題はなかった
「ですが、途中、一人の女子に声をかけられました
彼女は浪士たちが私たちの目を盗んで京に潜伏していて、それがここ最近妙に増えたと言っていました」
「なっ、なに!?!?
ついに動きを見せ始めたか?」
近藤は少々声を荒げるが、土方が落ち着け、となだめる
「ええ、それも何やらいろいろと準備をしているらしいですよ」
「いろいろ、とは?」
山南は普段の仕草を一つも崩さずに尋ねた
「やだな、山南さん
ここまできたらわかってるんでしょう?
もちろん、武器調達や作戦を練ったりってとこです」
そんな山南を見て同じように返す沖田
「チッ………動いてきたか」
土方は頭を掻きながら舌打ちをした