海風の如く




__ダダダダダ



__ピシャッ




「土方さんっ!!!!!」



沖田は焦っていた



だから怒られるとわかっていても、試衛館時代よりだいぶ眉間にシワが寄っている人の部屋をためらいなく開ける



「ったく、総司、てめぇはいつになったらわかるんだよ……って、その顔、何かあったか?
お前、巡察中だったよな?」



表情ですぐ判断できるあたり、この鬼と成り変わった人の本当の性格は変わっていないのだろう………なんて感傷に浸っている場合ではない



「蓮さんがっ………」



それだけ言うのがやっとだったのか、その先を言いたくなかったのかは沖田にもわからなかった



だが、土方はたったその一言で華蓮の身に起こった出来事の大半を理解していた



「………坂本か」



だからこそ、沖田は土方のいかにも府に落ちたような態度に納得がいかなかった



「坂本か、で済むことですか!?
蓮さんはさらわれたんですよ!!!!
確かに、何かわけがあるようには感じましたが……」



「んで、坂本を斬らずに帰ってきたわけだろ?」



__っ…、本当にこの人は痛いところをつく



そう、沖田だって華蓮の立場をある程度 は理解しているつもりだ



いずれは坂本と連絡を取り合い、協力する必要がある



それは華蓮から直接聞いていた






< 94 / 126 >

この作品をシェア

pagetop