海風の如く
「…土方さん、蓮です」
沖田から、華蓮が坂本と会っているというのはとっくに聞いているだろう
だが、それが余計に気まずい雰囲気を思わせた
「入れ」
心なしか、いつもよりそっけなく感じた
「ただいま戻りました
ご心配をおかけしてすみません」
土方は後ろを向いたままだ
「………あの、土方さん…?」
「無事なら…それでいい」
それだけ言い残すと、華蓮の顔を見ずに部屋を出ていこうとする
___どうしたんだろう
「……………何だ?」
気づけば、土方の着物の裾を掴んでいた
華蓮は、あっ、と声をあげ、すぐに手を離す
自分のしたことが恥ずかしくて、顔から火が出そうだった
「…えっと………その
あ、そうだ、後でみなさんに話があります………」
本当に言いたいことは違うのに、どうしても言えなくて、逃げてしまう
「わかった、時間は作る」
一度も振り返ることなく、土方は行ってしまった
__私、何かした?
坂本のことは前から報告していた
こうなることもわかっていたはずなのだ
別に土方に過剰に心配して欲しいわけでも、優しくして欲しいわけでもない
ただ、いつもと様子が違うのが気になってしかたがなかった