海風の如く
その夜、伊藤らを除く古株の幹部たちが他の隊士にバレないようにこっそりと集まった
「遅れてすまない、これで全員かな?」
最後に入ってきた土方と近藤は並んで座る
「はい、近藤さん………みなさん、今日はお呼び立てしてしまってすみません」
普通では華蓮のような平隊士、かつ小姓が、近藤を筆頭とする幹部を集めるなどあり得ないこと
この時代に来て、身分などを含む上下関係の厳しさはとっくに身に染みている
「いや、いいんだ
何か、進展があったのかね?」
近藤もこういうときの勘というか、オーラはさすが局長と言える
この状況では何かあったと報告があることくらいはわかるだろうが、近藤はそれだけでなく、どっしりと構えているのだ
華蓮は身を立たせ、ゴクリと生唾を飲む
「長州の裏で知恵を授けている可能性がある者について、情報が入りました」
『っ…………』
全員が表情を歪めた
無理もない、これは自分達の未来、これからのことを大きく左右することだ
「昨年の七月、京の町が焼け野原になりそうだったこと、覚えていますよね?」
華蓮が現代で生きていた時には、禁門の変と呼ばれた事件
なんとか大惨事となることは防いだものの、長州の企みは恐ろしいものだった
「その事件の時に指揮を取っていた、または入れ知恵をしていた人物がいる可能性があることは以前にお話ししました
それからずっと情報を集めていたのですが………………」
__どう伝えればいいんだろう
「それが、どうかしたのかね?」
「………あまりにも衝撃的すぎて、どうお伝えすべきか悩んでいるんです」
華蓮ですら、戸惑っているのだ
新撰組のみんなにとっては本当に理解に苦しむかもしれない