ある絵画のタイトル
ある絵画のタイトル
久しぶりの休みの、夕方。料理をしようと冷蔵庫を開けると、ろくなものが入っていなかった。連勤続きでまともに料理をしていなかったから当然だろう。
太陽はちょうど西に傾きかけている頃で、早い主婦らは買い出しでもしている時刻だ。私は厚手の上着とマフラーをとると、家を出た。
近所のスーパーまでは普段、車を使って行く。田舎だと車に頼りきりで、体を動かすことが少ない。たまの休みには散歩がてらこうして歩いたほうがいいだろうと、昨年母に言われたのだ。以来、その言葉には従っている。
マンションから出て東へ歩き、河原を横目にみながら進む。自分の影を踏むようにして行くと、橋を越えた先の交差点にはすぐ着いた。ここにスーパーがある。
買い物を終えて外へ出ると、スーパーの中のほうがまだ温かかったことに気づく。風がないと体感気温はずいぶん変わってくるものだ。
それでも沈みかけた夕日のほうが暖かく感じるのはなぜだろう。
買い物袋を握り直して橋を目指すと、ふわり、夜の空気がかすめて行った。川の近くはただでさえ寒い。マフラーを口元まで引っ張った。
橋を渡り終え、河原の横の道をまた歩く。向かいから歩いてくる犬を連れた老人や、自転車で私を追い越していく学生らも寒そうにしていた。そんな中、河原で俯く学生がみえてきた。
あの制服はたしか、隣市の有名な公立高校のものだ。今は2月の頭。彼女がなにを考えながらあんな寒い場所へ座り込んでいるのか、おおよその見当はつく。
私にもあんな頃があった。ぼんやりとそのことを頭に残しながら、自分の部屋へ帰った。夕飯は帰宅してすぐ作ろうと考えていたが、今は後回しだ。
買い物袋を玄関に置き去りにして、私は転がるように奥の部屋へ飛び込んだ。
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