狂った未来のお話
「それでは、次の商品を紹介しますね!
これは、少し頭は弱いのですが、見ての通り見た目が大変良くてですね。
よく若い方達が買っていくのですよ」
「…だめね。頭がパーなんて致命的じゃない。顔だけじゃ困るのよ。」
「……」
入店してから1時間。
びくびくと入った店の中で待っていたのはやはり地獄だった。
まずはじめに目に飛び込んできたのは頭を下げた従業員らしき人たちがズラッと並び
いらっしゃいませ!のオンパレード。
その後執事の律がやんややんやと話を進め、今はシャンデリアやら高級ソファのある部屋に通されていた。
「いやあ…でも、まさかあの神武財閥の次期当主様がこのような場所にきてくださるなんて…私共々この上なくうれしいことでございます。ねえ、山田さん。」
「は、はい!そ、そうですね。こんな田舎の店にきてくださるなんて、さすが次期神武の当主様です…。」
「まあ田舎っていってもこの店の評判は聞いてるわ。かなり繁盛してるみたいじゃない?」
「いえいえ、そんなお言葉…。しかし嬉しいですね。まさか辛口で有名な神武家の執事殿に誉められるなんて。」
「あら、あたしは思ったことをはっきり言うだけなのよ?それもこれも、全部この当主様のためにね。」
そういって先ほどから交渉していた律は
私の方へと向き直った。
なに。今までしゃべるな的な威圧をかけてきたくせに私に何を話せと!?
「…ええ、この執事の律にはいつも助けられています。本当に…。」
「そうですか!いや、いいですね!お噂ではお二人は古くからの友人でもあるとか。
…いやはや、本当にすばらしい。ねえ、山田さん。」
「え、ええ!ほんとに!お二人とも美しい姉妹のようです!」
「ふふ、お口が上手ねえ。でもありがとう。」
そういってまんざらでもない様子の律はそのきれいな顔で妖美に微笑んだ。
その微笑みに社長と定員らしい二人は顔を赤らめている。
…本当に我が執事ながらよくやる。そう思いながらやることはやったぞ!というように
私はそばにあった茶を飲んだ。
「でも、どうにもぱっとくるものはないわねぇ…。…頭が少しは良くないとこっちも困るのよねぇ。」
「…そうですか…。一度や二度使われていたものなら、該当するものがあるのですが、
どうにも新しいものだと限定すると…」
「…」
“新しいもの”“一度や二度”
その言葉に私は無意識に目を伏せてしまう。
ここでいう新しいものものは
一度も買われていないものを指す
一度や二度は
一度買われて返品されたもののことだ。
「…主。主はどう思います?この中で、気に入ったものはありますか。」
「…私?」
いきなり敬語を使われて戸惑うも私はそう聞き返す。
いきなり誰がいいなんていわれても。
というより、私はまだその気がないというのに
「…先送りということには?」
「ダメです。」
「そ、そうですよ!!先送りだなんて!
せっかくここまで来ていただいたのに、せめて商品を間近でみていってください!ねえ山田さん。」
「そ、そうです!きっと気に入るものがみつかります!」
「あら、いいんじゃない?主、そうしましょう?ね。」
「…」
その「ね」の横には〔威圧〕てかいてそうだよ。律。
そうして私はこの怖い執事とプラス押しの強い店員のせいで
イエス以外言うことができなかった。