狂った未来のお話

「あのー…。」

誰かいますかーーー?????

「……。」


自分のだせる大声をあげてみるが返事は自分の声だけ。

先ほどから何度もこれをためしているものの何一つ返事なんてなかった。

普通、お店の人が一人や二人いるものなんじゃないのか。


「あぁ…ここ“普通”の店じゃなかった。」

…まあもしかしたら“普通”じゃないのは私だけかもしれないけど

自嘲気味にそう思いながら取り敢えず真っ暗な店の中を進んでいく。

その暗闇がどんどん深くなる気がして背筋が寒くなる。


「おーい!!誰かいませんか~!」


耐えきれなくてまたもや大声をだす。

…あぁ、本当にここに律がいなくてよかった。
いたら
そんな大声出すなんてはしたないわよ。
なんて言われるだろう。


でも、今はそんな恐ろしい執事でもそばにいてほしい
お願いだ。早く見つけてくれ。律。

そうあの厳しい執事を思い浮かべた瞬間

私の足が急に止まった。

いや違う。

…動かさないんじゃない

動かないのだ


「っ!!!」


「…ほせぇ…。お前、女かぁ…」


「っあ、…だ、誰!?」


「久々に女なんかみたなぁ…。」


明らかにのぶといその声にこの足を掴むのは
“男”であると分かる。

男だ。男。 目の前にいるのは男なのだ。先ほどのように檻の中ではなく、

今、近くに、すぐ、そこに。



慣れていないせいなのか。

それよりも単純に得体の知れない者に恐怖しているのか。

私の頭は真っ白になった。


「っいっ!…いたっ。離して!」


「こっちはこんなとこに閉じ込められて暇なんだよ。少し相手してくんねぇ?」



掴まれていた足が解放されたかと思うと


当初足首を掴まれていた筈なのに
いつのまにか両手首を強い力で捕まれている。


「なんだぁ…お前良い女じゃねえか。…はっ。
こりゃ本当に今日は運がいい。」

なにも見えない場所から伸びた手らしきものに顎を掴まれ、ねっとりとした視線を感じる。

あっちには見えているのだ。この暗闇の中。
私の顔が

「なんだ、脅えてんのか…めずらしい女だな。」

「お、怯えてなんか‥!」

「…大丈夫だ…。優しくしてやるからよ…。」

「…っ!!」

本当にやばい!

恐怖と理解できないもののせいか私は力いっぱい目を閉じた。




「……?」





…しかし、いくらまっても予想した衝撃はやってこない。

先ほど聞こえていたのぶとい男の声も聞こえない。

しんと静まり返ったこの暗闇の中でみえたのは


「僕の場所で騒いでる奴は誰だ。」

 
真っ赤な瞳だった。

 
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