狂った未来のお話
「…!!お前!」
「…黙れ。もう一度言わせたいのか。貴様は。」
鋭く、低いよく通るその声がまるで刀のように男を貫く。
男が怯む気配を直に感じる
「っち。っくそが!」
とうの私はその赤い瞳に目が離せない。
真っ暗な空間にポツンとあるその瞳は今まで見たことがないくらい妖艶で美しかった。
しばらきくその瞳に魅入っていると足音が遠ざかる音が聞こえ、先ほどまで掴まれていた腕の感触はなくなった。
あの男はいったのだ。
ねっとりとした視線もなくなり、息苦しさが解放される。
「っ!……はぁ。…はぁ。」
…怖かった。
本当に、本当に怖かった。
激しく上下する肩と胸を押さえるようにかがみこむ。 カタカタと唇が震えた。
今になって恐怖が明確にやってくるだなんて。
今まで一度でもこんなことがあっただろうか。
ないからこそ、私はなめていた。
男というものがこんなに怖いものだということを
息を整えながら近づく足音にもう一度私の足がすくむ。
するとその足音はすぐ近くで止まった。
すぐ近くで息を呑む声が聞こえる。
「!」
「!…お前は…。」
閉ざされる言葉。
もう一度口を開く気配がするも、言葉にすることはなかった。
「命ーー!!!どこー!?」
「!!…律!?」
「命!!!その声命ね!!!」
足音が大きくなる。馴染みの声が聞こえて今度こそ私は深く息をはいた。
「!ばか!勝手に歩きまわらないで!ほんとにあんた馬鹿なの!?」
近くまできた足音が止まったと思ったら真っ暗な部屋に電気がついた。
目の前には眉間にしわをよせて肩を上下に揺らす律がいた。
よく見るとうっすらと汗がみえる。
「探しに来てくれたんだね…。ありがとう。律」
「っありがとうじゃない!どんだけ探したと思ってんの!」
「うん…ごめん。」
「…許さない。」
ふいとそっぽをむく律。
これは律が照れてるときにやるくせ。
その馴染みの仕草に緊張が解けていく
ようやく息を整え周りをぐるりと見渡し、
あの赤い瞳の男の人がいないことに気づく
いつのまに消えていたんだろう。
「律。ここに来るとき誰かとすれ違わなかった?」
「誰かって…いなかったわよ。そんな人。」
なにいってんのよ。といいたげな律を見ながら私は首を傾げた。
しばらくして私たちがいないことに気付いた店員さん達がここまできてくれて、
その場は収束したのだった。