メルヘンチック·レボルバー
勢いよくそう叫んだ大輔に、僕はしかめっ面を見せた。



「何で幸香のこと、そんなに詳しいんだよ」


「ぎゃぁぁあ!幸香って!いつの間にか呼び捨てになってるし!」


「話聞いてないでしょ、大輔……」



これ以上何か言っても、ただ時間が無駄になるだけな気がする。


僕は、大輔の気がすむまで叫ばせておくことに決めた。



それに、大輔の言い分もわからなくもない。



幸香は、自分の目が普通の人よりも光に弱い、という理由で、体育も休みがちだったし、おとなしかった。


嫌われているわけではないけど、どちらかと言うと単独行動も多い。


それに、生物室に通って顕微鏡を触るっていう謎の趣味も持っている。



しかも、生物の倉持先生と付き合ってる、なんて噂も流れてるくらい謎めいた存在だったんだ。



初めは、好きだとか、そう言う感情は全然なくて、ただ、幸香の不思議な雰囲気に吸い寄せられるみたいな感覚だった。



気づけば、幸香を見てる……みたいな。



それなのにだんだん、レーダーがぴっ、と反応するみたいに……

ピントがぴたっ、と合うみたいに


学校のどこにいても幸香のことを探し出せるようになっていた。



放課後のグラウンドから見える生物室が、部活中のエネルギー源になっていた。



だから、一方的に好きだと思っていた幸香と両想いだと知った日には、それはもう、飛び上るほど嬉しかったんだ。
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