罰ゲームでヤンキー君に告白されました。


「さむーい。走りたくなーい」

「一時間目から体育は勘弁してほしいよね」

「ほんと」


ぐちぐち文句を言いながら、グラウンドをスタートして門を出て、学校の周りを十周したらお終い。


なんだけど、寝不足のせいか走り始めてすぐ具合が悪くなってきた。
息が白くなってもあもあと浮かんでは消えていく。


お腹痛いなぁ。
なるべく楽しいことを考えようと、近くを見渡してみると。


「あ」

「あ?」


タイミングがいいのか悪いのか、昨日あった美人さんを発見した。

「えみ」

「何?」


えみもだるいからあまり話したくないのか、無表情で返事がかえってくる。


「昨日龍也君と歩いてた時、あの人に会ったんだけど」


彼女のことを発見し、納得したように頷いた。


「あー、星乃先輩ね。大神、一時期あの人と付き合ってるって噂があったから」

「えっ!?」


まさか元カノ!? いや、確かに言われればそんな感じはしたけど。


「知らなかったの? 有名なのに」


「あんまり誰が付き合ってるとかそういう話、興味がなかったから」


私はジャージ姿の星乃先輩をまじまじと眺める。


遠くにいても、みんなと同じ紺色のちょっとダサいジャージを着ていても、やっぱりスタイルがいい。


一つに結んだ長い髪が走る度にふわふわ揺れていて、美人は体育の授業を受けているだけでも絵になるんだと溜め息がこぼれた。


< 44 / 174 >

この作品をシェア

pagetop