運び屋の受難
「さーて。そろそろ手塚くんも諦めただろうし、帰ろっか」
「……動けないんだけど」
私の言葉に一瞬「え?」って顔をした後で「ああ」と呟いた。
「ごめんごめん。昨日やり過ぎたみたい。でも君が面白いからいけないんだよー」
笑いながら言われた。
私が悪いってのはさすがにないでしょ。
「…あんたとは、今後絶対にしない」
「君の意思とは関係なく、物語は進むものだ。
君がどれだけ嫌がろうと、俺は君を離さないからねぇ」
トオルさんの口角が上がる。その表情と言葉に寒気がした。
……本能的に逃げ切れないと悟ったからだ。