運び屋の受難
「お前、大神とはどういう関係だ」
「……顔見知りです」
関係なんて、聞かれてもわからない。
「顔見知り程度の奴とラブホ入ったのかよ!?
……世も末だなぁ」
顔を赤く染め、驚く手塚さん。
そういえば純情だとかなんとか、トオルさんが言ってたな。
「まあ、それはいい。
悪い事は言わない。あいつに近付くな」
好き好んで近付いたことなんて一度もない。向こうから来る、それだけ。
「お前は知らないんだろうけどな、あいつは殺し屋だ」
「殺し屋…?」
手塚さんは頷いた。
知っているけどとぼけておく。知っていることがばれたら、面倒なことになる気がしたから。
「それもあいつは、金の為に殺すんじゃない。殺したいから殺すんだ。いわば趣味なんだ」
殺すことが趣味だなんて、たちが悪い。こっちの迷惑を考えてほしい。
「……で、お前は何者だ?」
手塚さんは少し冷めたコーヒーを一気に飲み干した。
私が浮かべていた笑みが強張ったのがわかった。
その質問の真意がわからなかった。