運び屋の受難
「変な依頼なので、断られるかもしれないのですが」
「私にできることならお引き受けしますよ」
「そうですか、よかった。
実は運んでもらいたいのは…僕なんです」
照れ臭そうに頬をかく依頼人の言葉に動揺を隠し切れなかった。
「今日から一週間、僕は行かなきゃならないところがある。その場所まで運んでほしい。
……ね、変な依頼でしょう?
理由は聞かないで頂きたいんですが」
「えっと……」
私は運び屋。だけど人を運んだことなんて一度もない。
返事を渋っていると、依頼人は頭を下げた。私のような小娘に。
「お願いします!
一週間後、一千万円お支払いしますので!」
依頼人の言葉のおかげで心が決まった。
頭の中で今週のスケジュールを確認する。
大丈夫、なんとかなりそうだ。
「お引き受けしましょう」
再び営業スマイルを向けた。
一週間で千万円ももらえるなんて、こんなおいしい仕事他にあるもんか。