運び屋の受難


「変な依頼なので、断られるかもしれないのですが」

「私にできることならお引き受けしますよ」

「そうですか、よかった。
実は運んでもらいたいのは…僕なんです」

照れ臭そうに頬をかく依頼人の言葉に動揺を隠し切れなかった。

「今日から一週間、僕は行かなきゃならないところがある。その場所まで運んでほしい。
……ね、変な依頼でしょう?
理由は聞かないで頂きたいんですが」

「えっと……」

私は運び屋。だけど人を運んだことなんて一度もない。

返事を渋っていると、依頼人は頭を下げた。私のような小娘に。

「お願いします!
一週間後、一千万円お支払いしますので!」

依頼人の言葉のおかげで心が決まった。
頭の中で今週のスケジュールを確認する。

大丈夫、なんとかなりそうだ。


「お引き受けしましょう」

再び営業スマイルを向けた。

一週間で千万円ももらえるなんて、こんなおいしい仕事他にあるもんか。

< 167 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop