運び屋の受難

ーーー


「あれ? ハルちゃん?」

聞き慣れた、少し驚く声。
名前を呼ばれて顔を上げた。

「ぶっさいくな泣き顔」

アハハと、何事もなかったかのように笑う。
その男は、もう一人男を引きずっている。
煤で黒くなりながらも元気そうだった。

「トオルさん…?」

「うん、トオルだよ」

勢いよく涙が溢れ出した。

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