運び屋の受難


「ごめんなさい」

遠山さんは私に頭を下げた。

「?」

困惑。どうしていいかわからなくて、トオルさんを見る。
トオルさんは我関せずといった感じでナイフの手入れをしていた。

「トオルを誰にも渡したくなかった。
だから、トオルのお気に入りのあんたを使ってトオルを呼び出した。
トオルを見ていてわかったよ。悔しいけど、俺はあんたとトオルの間に割り込めない」

悲しそうに笑う。

ん? なんか間違いが生じているような。

「トオルを幸せにしてやってほしい。
そうじゃなきゃ、次は本当に俺があんたを殺すから」

ぞっとするような殺意を感じた。
わけもわからずに首を縦に振る。

< 199 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop