運び屋の受難
「そんなに必死か、うん。
なら見逃してあげる。
その代わりにゲームをしようよ。俺の高校時代のマイブーム」
「ゲーム?」
「とりあえずこの場は君を逃がしてあげる。
そして俺が飽きるか、君が自ら命を絶つか。
そうなるまで続いていくゲームだ。
……まぁ、今まで俺が飽きるまで続いたことはなかったけど」
死神は懐かしむように話す。
ゲームの内容については何の説明もない。
だけどわかることがひとつあった。
高校時代に行ったこのゲームで、相手が自殺するほど追い込まれていたこと。
「さて、このゲームに興じるか、ここで死ぬか。
君にはその二択しかないけどどうする?」
「やる」
考えるまでもない。
一分一秒でも長く生きたい。
「いい返事。精々愉しませてよ」
死神はそう言いながら、果物ナイフで縄を切った。