運び屋の受難


死神の運転姿を見た。
殺し屋と二人きり。
こんな状況ではあるけど、すごく大人だなと感心した。
人を殺さず、黙って笑うだけだったらかなりモテるだろうな。
いや、この見た目ならこんな悪条件でもモテるかもしれない。


「うわ、渋滞だ」

死神は呟く。渋滞に巻き込まれてしまったようだ。

「そう言えばさ」

「はい?」

「昨日の目潰し、すごく痛かったんだけど」

「あ…ごめんなさい」

謝りながら何を謝っているのだろうと思った。
この頭の傷の方が重症度高い。

「上っ面だけで言ってるってすぐわかるよ」

ばれた。
でも死神は気分を害したようでもない。クスクスと笑っている。

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