運び屋の受難
「さて、不本意だけど時間もできたことだし、自己紹介でもしようか。
俺は大神トオル。知っての通り殺し屋です」
何のために自己紹介が必要なのか理解できない。
「さ、ハルちゃんも自己紹介どうぞ」
うん、絶対意味ない。
死神はもう私の名前を知ってるんじゃん。私は教えてないけど。
「如月ハル」
名前だけ返す。
「ハルちゃんはどうして運び屋になったの?」
「……生きていくため」
運び屋になるまでにも色々なことがあったわけだけど、そんなことを死神に教えてやる義理はない。
私がそう返事すると、死神はまたペラペラと喋り出した。
「生きるためって言っても女の子で運び屋になるなんて珍しいよね。結構危険でしょ」
現状より危険なことなんて今までなかったけど、と心で毒づいた。
「ちなみに俺が殺し屋になったのはね、人を殺すのが好きだから。
まぁ趣味が転じてって感じだね。同業者にはビジネスと趣味は違うって言われるけど、実際結果も出せてるわけだし、天職だと思ってるよ。
特に気に入った玩具を壊すのは最高の瞬間だと思わない?」
趣味について語るような口調で話す。
こいつ、狂ってる。理解できないし本気で関わりたくない。