運び屋の受難
「えー、それで逃げたつもり?
俺ピッキングも上手だよー?」
外から愉快そうな死神の声が聞こえた。
鍵穴からカチャカチャという音がする。
私はスニーカーを脱ぎ、その靴を持ってベランダに向かった。
三階。スニーカーをもう一度履き、地面を見下ろした。
三階だもん。不可能ではない。
自分の身体能力を信じろ。
カチャン
その音の後に鍵を閉めていたはずのドアが開いた。
……迷っている暇も、うだうだしている暇もない。
一呼吸置いて、私はベランダから飛び降りた。