運び屋の受難


「じゃあね、翠さん。ごちそうさま」

ナポリタンの料金を置いて立ち上がる。

「あ、うん。気をつけて」

翠さんはそう声をかけてくれた。
私は小さく手を振り、店から出た。


ーーー


「追いかけなくていいの?」

「いいの。待ってたらまた会えるし」

「やっぱり私、あなたのこと嫌いだわ」

「別に君に嫌われようと興味はないけどね」


上辺だけの笑顔で話す二人の会話を私が聞くことはなかった。

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