運び屋の受難
「どうしたんですか?」
『今大丈夫か?』
「とりあえずは、ですけど」
『そうか、よかった。
嬢ちゃん、大変なことになってるな』
「何の話ですか?」
『どこの誰かは知らんが、お前に賞金をかけた輩がいるみたいだ』
「……賞金?」
『捕まえて指定された場所に届けるだけで100万もらえるんだとよ。この辺りの連中には無差別にそのメールが送られているみたいだ。
どうも与太話臭いがな』
「何ですかそれ。どこの誰がそんな話を信じるんですか」
『実際何年か前に同じような話でもらった奴らがいるらしい。
それでゾクやら組の下の方やらは躍起になってお前を捜してるらしくてな』
「組って、ヤクザですよね」
『ああ。うちの組には一応こんなもん信じるな、とは言ってるけどな。もしかしたらお前を狙う不届き者もいるかもしれん。気をつけろ』
「……わかりました」
『嬢ちゃんがいなくなったら優秀な運び屋が一人消えることになる。それは大きな損失だ』
「ですよねぇ。まぁなんとかします」
『期待してる。じゃあ切るぞ』
「はい。今後も仕事のお話、あればどうぞご贔屓に」
重治さんの笑い声を最後に通話が終了した。