いつもそれは突然で。
「榛原先輩!」

私は派手に先輩の名前を叫んで目を覚ました。
私がいたのは真っ白な空間だった。

少し遠くで聞こえる声。
まだ、モヤのかかったような景色。

その景色はゆっくりと明けて行って。
そばにいたのは、先輩と、みかちんだった。

みかちんはいつもやさしくて
先輩は、いつもの先輩なら

「なーんか呼んだっ笑?」

って意地悪そうに笑うのに。
私にアクションを起こしたのは、みかちんだった。

「葵ちゃん」

なになにと笑って答えるとみかちんは震えてた。
葵ちゃんが死ぬかと思ってみか、寂しかった、怖かったよ。

そう言って。

みかちんはこんなにも優しくて
こんなにも可愛いのに、なぜか友達が少ない。

「ねえあおいちゃん大丈夫なの?」


まだ全然痛いけどね」

「あっごめんね」

私に抱きついてきてたみかちん離れた。
みかちんは、私帰るねって言って私に背を向けた。

「なんで?」

なんか寂しくなって聞いてみる。

「みかちんは私に内緒話で

「先輩に会いたかったでしょ?」

そいうとじゃあねって帰っていった。
私はなんか恥ずかしくてこの空間を微妙にしてしまった。

だって先輩が私のことをガン見してるから・・・。
私何もリアクション取れないんです。

俯いてるばかりの私。
下ばっかり見てるから先輩の足が見える。

先輩が近づいてくるのがわかる。
それはキュッキュッて鳴り響く靴の音でもわかる。

先輩はすごい近くに私の隣に座った。

ダメだ私。

心をどうにか誤魔化せたって脳とか体は嘘をつけない。
どんな時だってそう。

先輩がこうやって私に優しく触れただけで体温が上がっていく。
決して変な意味じゃなくて。

私の頭を優しく撫でてくれただけでほっぺが濃いピンク色に染まっていく。

で、また体は素直になる。
優しいけどいつもと少し違う先輩のことを見上げちゃう。

瞳が、与えられたこの貴重な時間を確かに焼き付けようとする。

神様今は、素直になっていいですか?

いいよね?
こいう時くらいしっかりと先輩を見てていいですよね?

私少し妬いたよ。
すごい至近距離で先輩とみかちんがいたこと。

でも嫌だなんて言えないから・・・。
私お人好しすぎるから仕方ないじゃん。

「おそようさん」

私にニコッと微笑みかけた今の先輩は天使だ。

「あ・・・あの、私どれくらい寝てましたか?」

「っどれくらい・・・」

先輩は眉間にしわを寄せて考える。

「確か、葵が」

葵が!?
いま呼び捨てにしましたよね!?!?

「事故ったのが6月の話だから1っヶ月ちょっとかな?」

1ヶ月ちょっと。
そうか、確か事故起こす前の日は大雨で自転車の修理に行けなかったんだっけ。

「あー、制服取りに青いの部屋上がったから。」

「あっはい・・・えっ上がったんですか!?」

ああの汚い部屋に上がったの?
それまじでないよー。

神様?
この時間は本当に感謝してるけど何しちゃってくれてるんですかー。

それから先輩と少し話した。
学校の授業は私の好きな範囲も終わってしまてた。

私は、補修の対象者だったけど先輩と友達が
どうにかして、回避してくれたらし。

これから夏休み。
遊ばなくちゃいけないとき。

来年は高校3年生、受験の夏。
遊びには行けないぶん今年はいっぱい遊ばなくちゃ。

「でも補習はなくなったわけじゃないぞ」

私の包帯の巻かれてないところに弱い弱い力でデコピンをした。
それでも頭に痛さは渡る。

私はおでこ抑えて

「どういうことですか?」

聞いてみた。
話によると、学校での補習がなくなっただけで課題は山のようにある。

それを先輩と先輩のお姉さんが教えてくれるという補習ならしい。

「えっ・・・」

私はまたしてもフリーズ。
だってこんなにも大好きな先輩のおうちにお泊りして

それで・・・補習なんて心は嬉しいのに
顔は全然喜ばない。

なるほどさすがにこいうときは顔は緊張するんだ。

でも神様、あなたの書いた私の人生はある意味最高!

「先輩、1月聞いていいですか?」

「どうしたんだよ、急に改まって」

えっ、私こう言う話し方じゃなかったの?

「私、どこでいつ事故起こしたんですか?」

例え全てじゃなくても、少しでも前のままであるように。

「マジで覚えてないのか」

先輩の顔はすぐに悲しい顔になった。

ああ私は最悪だ。
好きな人ですら笑顔にできないよ。

「葵は、6月の半ばに事故を起こしたんだよ。
いつもよく待たされるあの交差点で。
大型トラックに当たられて、瀕死で。

医者は頭を強く打ったって言ってた。
本当は葵死んでたかもしれないんだぜ。

なのに急なこの回復ぶりには医者も目を丸くしてるよ」

先輩は窓から遠くを眺めていった。

事故をした場所は私の覚えてるどおりだ。

「今日は何月何日ですか?」

「7月の17日だよ」

ああ聞かなかったらよかった。
一気に頭の中が真っ白になったよ。

「いま?いまは2015年」

私が確かに生きてた年は2017年だ。

私タイムスリップしてる。

先輩は茜の差し始めた7時前頃に帰っていった。

一人になった病室は寂しかった。
まだ完璧に動けるほどじゃない私はしばらくは車椅子生活なはずだった。

なのに。

次の日には体は回復していた。
周りの人も先輩も目を丸くする。

そりゃそうだよね。

ただ残ったのは、ジンジンする痛みと頭の包帯。
私の体に以上が起きてるなんてこの時はまだ知らなかった。
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