もう人気者には恋をしない
「須藤さん……こんなところでどうしたの?怪我でも……した?」


 先輩が顔をこわばらせたまま、口を開いた。


「あ……私は……保健委員で。先生に頼まれて、当番を……」


 私も、しゃべり方がぎこちない。

 だって話すのは……あの日以来。


「あ……そういうこと、か……」


 それからまた沈黙……

 ど、どうしよ……

 なかなか動けないでいると、先輩がゆっくりと保健室に入ってきた。


「須藤さん……大丈夫。自分でやるから。道具、借りるね……」


 先輩……

 私のこと、気づかって……

 見ると、左腕がかなり擦りむいてる。

 わ……痛そう。

 後藤先輩がケガしてるのに……

 怖がってる場合じゃない。

 保健委員なんだし、今は気持ちを切り替えなくちゃ。

 私は密かに、深く呼吸をした。
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