もう人気者には恋をしない
「……出来ました」


 包帯、巻き終わっちゃった……。

 先輩は、巻かれた腕を眺めながら動かした。


「ありがとう……須藤さんって絵だけじゃなくて、手当ても上手なんだね」

「っ、先輩っ……」


 その優しい言葉に、私は思わず顔をあげた。


 あんなに避け続けてたのに、先輩は変わらず優しく接してくれた。

 それが私には切なすぎて、胸が締め付けられる。

 涙が……込み上げてくる。


「須藤さん……」

「はい……」

「俺の話……聞いてくれる?」

「え?」

「俺の一方的な話だけど……いい?」


 先輩は、まっすぐ私を見て言った。


「……はい、聞きます」


 先輩が聞いてほしいなら、私もちゃんと聞こう。

 怖い気持ちを抑えて、私は耳を預けた。
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