もう人気者には恋をしない
「あの絵本……読ませてもらったよ」

「あの絵本?……あ」


 そうだ。私、あの時スケッチブックを落としたままだった。

 先輩……読んでくれたんだ。


「やっぱり……須藤さんだったんだね」

「……え?」


 須藤さんだった……って?

 なんのことかわからずにいると、先輩はフッと笑みを浮かべた。


「須藤さんさ、この絵本……高校の隣町にある公園で読んでたことあるでしょ?去年文化祭に来てた、あのコと……花ちゃん、だっけ?」


「隣町の公園…………
 えっ……なんで!?なんで、先輩がそれを知ってるんですか?」


 確かに、花ちゃんと一緒に隣町の公園に行って、あの絵本を読んだことがある。

 けど、それは中一の時。しかもあの公園、うちの近所からは遠くて。お母さんに、あんまり遠くに連れ出さないようにと言われてたから、花ちゃんと二人だけの秘密にしてたのに……

 それを、どうして先輩が!?
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