もう人気者には恋をしない
「それが原因で、練習試合に集中出来なくなってミス連発。練習とはいえ、強豪と出来る大事な試合だったのに。サッカー部のみんなは事情を知ってたから、そこまで責めなかったけど……
 俺は、自分で自分を責め続けた。
 試合のことも。彼女のことも……」


 先輩は、今でも鮮明に覚えてるんだ。昨日のことのように話してる。

 いつも明るい先輩に、そんな過去があったなんて……

 先輩の心中を察すると、胸がひどく痛んだ。


「試合の後、すぐに家に帰る気にもなれなくて、公園のベンチに座り込んでたら……隣のベンチに女の子が二人、楽しそうに座ってきたんだ」

「あっ……」

「それが……花ちゃんと、須藤さんだった」


 思い出した。

 あの時、花ちゃんが隣の人を見て『王子様みたい』って言ってた。私もチラッと見たけど、あんまりジロジロ見たら失礼かなと思って、ハッキリとは見れなかった。だから、顔なんてもう覚えてなかったけど……

 まさかその人が……後藤先輩だったなんて。
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