もう人気者には恋をしない
「後藤先輩っ!」


 私の声に、先輩はゆっくりと顔を上げた。


「……須藤さん。来てくれたんだ。

 俺も探しに行こうって思ってたのに、先を越されちゃったな」


 先輩は、よいしょと立ち上がった。

 制服のボタン……全滅してる。


「先輩って……やっぱり人気者ですね」

「え……あ、これ?

 ハハッ、見事に取られちゃってさ。シャツまでも……いやぁ、女子のパワーは計り知れないね」


 こういう時って、第二ボタンとか欲しかったってガッカリするんだろうけど……正直、ボタンなんてどうでもいい。

 私が欲しいのは……先輩自身だから。


「私……人気者の人って、嫌いなんです」

「……えっ?」


 唐突に言うと、先輩が急に顔を曇らした。
< 119 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop