もう人気者には恋をしない
 心の中で舌打ちした。

 他にもベンチはあるのに、何でわざわざ隣に来るんだよー。

 一人になりたいのに……たくっ。

 とはいえ、動く気力もない俺は、しかたなく持っていた文庫本の小説を取り出した。

 いつまでもうなだれてたら、変に思われる。本を読むふりをしてやりすごそう。

 俺はテキトーなページを開いて、ぼんやりと本を眺めた。

 それにしても、人のことを邪魔だと思うなんて、普段の俺ではあり得ないことだ。しかも子供は好きな方なのに。いつもだったらあの小さな女の子に対して、手を振ったり愛想を振りまいたりするんだけどな……

 よっぽど心に余裕がないんだな……はぁ。

 つい、気持ちが落ちることばかり考えてしまう。
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