もう人気者には恋をしない
「ほら、早く来い!」


 部長さんは先輩の首根っこを掴んで、ズルズルと引きずりだした。


「いやぁ~、優しくしてぇ~」

「やかましいっ!」


 後藤先輩が、行っちゃう……


「あ……後藤先輩!」


 ……はっ。つい、呼んじゃった。


「……ん?何ー?」


 先輩は引きずられながらも応じてくれた。


 私……なんで呼んだの?


 何も言うことなんて思いついてないのに、どうしよう。

 何か……何か言いたいことを……


「えーと……私、応援してますので!
 練習、がんばってくださいっ!」


 やっと思いついたことを、焦りながら言った。

 すると先輩は、パッと笑顔を見せた。


「うん、ありがとうー!

 えーと……須藤映見さん!」

「……はい!」


 名前、呼んでくれた……


 さっそく覚えて呼んでくれたのが、すごく嬉しく思えた。


 胸が……やけに熱い。
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