もう人気者には恋をしない
*


 グラウンドの隅のベンチに座り、辺りを見渡した。


 今日もファン達の黄色い声援が飛び交っている。
 ホント、サッカー部ってすごい人気。


 それで、ほとんどが後藤先輩のファンなんだぁ……


 って、あれ?その、後藤先輩は?

 グラウンドを見渡しても、姿がなかった。

 もしかして、今日お休みなのかな?

 そっかぁー。いないんだー。

 …………

 って、だから違うって!

 私は、相葉君を描きに来たの!

 後藤先輩じゃないでしょう!?

 自分で自分に、よーく言い聞かせた。


 えーと……

 あ、いたいた相葉君。

 相葉君も私と目が合い、小さく手をあげてくれた。


 ふふふっ、やっぱモデルやるのに照れがあるみたい。動きが急に固くなってるし。ちょっと練習の邪魔かな?早く描きあげないとね。

 私は気を取り直して、スケッチブックを開き、鉛筆を走らせ始めた。
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