もう人気者には恋をしない
「それじゃあ……映見ちゃん♪」

「えっ……はいっ」


 ドキッとした。

 オネエキャラでだけど、
 今『映見ちゃん』って……


「ここ、フェンスないからボールに気をつけてねー♪」

「あ、わかりました。ありがとうございます……」


 後藤先輩は、グラウンドへと走っていった。


 うそぉ……下の名前でも呼んでくれた……ふざけた感じでも、なんか嬉しいな。

 気持ちがフワフワしたのもつかの間……

 先輩がグラウンドに現れた瞬間、ファンの黄色い声が一気に大きくなった。
 ファンがいるところからは、ここのベンチは見えてなかったんだ。今日初めて後藤先輩を見たかのような歓声っぷりだったから。

 ホント、噂どおり……

 先輩の人気っぷりを、思い知らされた感じ。

 名前呼んでくれただけで私……
 調子にのっちゃうところだった。

 あんなに人気のある先輩だもの。
 私のことなんて、みんなと同じように接してるだけに決まってるのに……

 一気に現実を突きつけられた感があった。


 気をつけないと……

 もう、勘違いをしたくない。

 あの時みたいに……
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