もう人気者には恋をしない
「先輩っ、あのっ……」


 ガラーッ!


「っ!!」


 だっ、誰っ!?

 入り口の方を振り返ると……


「あ……須藤?」

「あ、相葉君っ……」


 うそぉ……噂をしてたから?

 だけど、こんなタイミングで来るなんてー。

 相葉君は、もう貞子の姿じゃなくて、制服姿だった。


「受付係が終ってさ、やっと観に来れたんだ……あれ、一人?」

「えっ!?ちが……あ、あれ?」


 後藤先輩!?き、消えた!すぐ隣にいたのに!

 辺りを見渡したら……あ、いた。

 先輩すごい。いつの間にベランダへ……

 窓からこっそりと顔を出している。

 ビックリした。素早すぎですよ。

 そうだ、先輩はお化け屋敷から脱け出したままだったんだ。だから、相葉君に見つかりたくないのかも。

 私と目が合うとニコッと笑った。

 先輩……

 あぁ。聞きそびれちゃった……

 でも、どこかで……ホッとしている自分がいた。

 これでハッキリ訊いてしまったら、
 現実を受け止めなくちゃいけなくなるよね。

 悪いにしろ、いいにしろ……今の私にはまだ、それを恐く感じてしまっていた。
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