もう人気者には恋をしない
「森の……迷いグマって?」


 先輩がさらに聞いてきた。


「森をさまよい続けるクマさんと、怖がりな女の子の話です。
 私の……二作目の絵本でして……」


 先輩に話ながら、絵本の内容を少し思い出した。

 こんな話、先輩笑うかな……


「…………良かったらそれ……今度見せてほしいんだけど」

「えっ!?」


 笑うどころか……私の絵本に、かなり興味を持ってくれてる?


「よ、読んでくれるんですか?二作目だし、そんなに上手ではないんですが……」

「上手じゃなくても何でもいいよ。
 その絵本読んでみたいんだ……あっ!」


 先輩が体勢を崩し倒れかけた。


「先輩っ!きゃっ……」


 私じゃ支えきれず、二人でそのまま倒れ混んだ。


「いたたっ……」


 クマさんの顔が、思いっきり顔面直撃したぁ。

 鼻血とか……出てないよね?


「ごめんっ、須藤さん!大丈夫!?」

「はい……あ」

「あ……」


 先輩が、私に覆い被さっていた。

 クマさんの頭も取れている。

「……」

「……」


 二人で、ボーゼンとして見つめ合った。
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