【ショート・ショート】髪
「本当にいいんですか?」
「“いい”って言ってるでしょ!」
もう、“いい”のだ。 もう、終わってしまったから。
「後悔、しませんか?」 彼女を想い続けた分、私の髪は腰まで伸びていた。一部の人達にはうらやましい長さらしいが、私には重すぎる。長い髪は、彼女との長い記憶を含んでいるから。毛先の方は、彼女と出会った頃のものだから。
後悔は、したくなかった。
「切って下さい」
これは、ひとつの教訓なのだ。人はそう、変わりはしないと。彼女から教わったのだ。
「解りました。貴女の想いごと切ります」
―完―