もしも私がーcasket in cremtion。
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山中に銃声が木霊する。
「ちっ!もう弾切れかよ!」
靭は舌打ちして呟くと、顔の近くで銃を握り締め
「さっきから後ろの岩陰に隠れてんの誰?」
と冷たい声色で言うと
「おうおう、相変わらず「命中率100%」健在だな靭!拍手してやろうか?」
軽く拍手しながら岩陰から出て来たのは永璃だった。
「何だ、永璃か。後ちょっとで発砲しちゃうとこだったよ……で?何か用?」
言いながら銃に入っていた空薬莢を捨て、新しく詰めかえた。
「気づいてたくせに。お前がまたムシャクシャしてんじゃねぇかと思ってな。俺達に黙ってどっか行く時は大抵そうだろ?いい加減ムカつくと銃乱射する癖は止めた方がいいぜ?」
言いながらタバコを銜え「それ、四発命中する前に何発撃ったよ?」と言うとタバコに火を点けた。
「ふん、つけてきたなら知ってるだろ?」
不機嫌に答えると銃を岩に向けて構えた。
「何だよ、まだムカついてんのか?」
「そんなんじゃないよ。ただ……。」
「ただ?」
「モヤモヤするだけだよ!!」
そう言いながら、弾を込めた分全部撃った。
「ダブったか?アイツに。」
「……っ」
眉を顰めながら、銃を握り締め俯く靭に
「状況も同じ、性格もまぁまぁ似てる。お前があの年齢の頃だもんな。思い出さない方がおかしい。」
「……永璃だって人の事言えないだろ?永璃がダブったから、そんな事思ったんだろ?」
そう問われた永璃は困ったように眉を顰め、俯いた。それを見ると靭はため息をついて
「ごめん、そんなんじゃないから・・ほら、僕らが任務外された事なんてなかったじゃん?だから、ちょっとムシャクシャしただけ。」
「そうか……じゃあ、そろそろ戻るか?」
「うん!」
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「あれ?そういえばあの二人は?」
「今頃気づいたのか?・・あいつらは情が熱いからな、女の涙に堪えられなかったんじゃないのか?」
「何それ、似合わない。」
「そうだな。ダブったのかもな」
「え?」
「うおーい!おまたせ!」
山に向う崖の坂道から靭が手を振りながら走って来た。後ろには永璃もいる。
「別に待ってない。」
幟呉はそっけない返事を返した。
「ひど!幟呉ひど!永璃、幟呉が冷たいよ!」
「アハハ、それは前からだろ?」
笑い飛ばしている永璃を尻目に、私はしきりに考えていた。
(ダブった?ダブったって、誰に?何が?)