もしも私がーcasket in cremtion。
『!?』
靭と永璃は聞き覚えのある声に耳を澄ませ、ゆっくりと後ろを振返る――と
「幟呉!」
「休んでて良いって言ったじゃん!」
「そうだぜ!?」
慌てて幟呉の所へ戻る二人に幟呉は
「そうもいかないでしょう?」と、完全に【人前モード】になっていた。
聞かれた女性は、三人を見て
(カッコイイ)とほくそ笑み
(でも何で着物?)と幟呉の格好に多少疑問を抱きながら、見せられた写真を見た。
その写真に写っていたのは、14,5歳の少女で、髪が栗色という事以外は何処にでもいるような普通の少女だった。
女性はその写真を見て(あら?)と思った。
何処か見覚えがある。
「あの、この子がどうかしたんですか?」
「この娘は」
言いかけた幟呉を遮って
「ボクらの妹なんだよ。家出しちゃったんだ!」と靭はとっさにごまかした。
「そうなんですか。」
女性は(あまりっていうか、全然似てないけど)と思ったが、他人の家族事情に踏み込む事は出来ないので言いかけた言葉を飲み込んだ。
その様子を見て靭は
(こう言っとけば踏み込まれないよね。万が一似てないって言われても、本当の兄妹じゃなくて、それを知って家出したって言えば良いんだし!それにしても、お姉さんイイ女だな。同情買って、一緒にお食事でもしちゃおうかな。直行便で。)
何て事を考えていた。
それを実行に移す前に、女性は「あ!」と声を上げ
「思い出した!私この子見たことあるわ!」
「本当ですか!?」
幟呉が勢いよく聞くと、女性は少し戸惑いながら「ええ」と言って、その名を口にした。
「ここの道を真っ直ぐ行くと、飲食店が結構並んでる通りがあって、そこにある〝GET来(カム)来(カム)〟って名前の中華屋さんで働いてるのを何度か見たことあるわ。」
それを聞いた三人は、お互い目で合図を送ると
「ありがとうございました!」と言い、早々に去って行った。