もしも私がーcasket in cremtion。

 厳格そうな渋い声が耳に届いた。

(……誰かいるの?主覺って?)

私は静かに階段を一段ずつ上り、体を低くして覗いた。すると、そこに居たのは

(鳥!?)

洞窟で見た鷹みたいな鳥が、アパートの手すりに捕まっていた。

(ていうか今誰が喋ってたの?靭達もいるけど、三人の声じゃないし……。鳥のわけないしね。)

「で?主覺からのお言葉ってやつは何なのさ?」

ぶっきら棒に靭が鳥に向かって聞く。

(靭、何で鳥に話しかけてるの?)

私がそう思ったとき

「主覺からのお言葉は――」

(鳥が喋ったァ!)

そう、まぎれもなく、鳥が喋ったのだ!だけど

『立花圭子と、何か仲良くなってるみたいじゃない?』

 声が変わった。さっきの渋い声じゃなくて、少年の声だった。
 はつらつとした声は、どこか楽しげに続けた。

『キミ達は立花圭子の拉致、無理なら殺害という任務で失敗してるよね? その後、与えてあげた今回の名誉挽回のチャンス、半年以内に拉致、もしくは殺害という任務にも失敗した。』

 ふと、私の中に疑念が生まれた。

(なんだろう? この声、どこかで聞いたことがあるような……?)

 だけど、次の瞬間それは吹き飛んだ。

『僕は、一応君達『月組』をかってるんだよ?』

 月組……って、確か永璃が組という称号を与えてもらった者はエリート的な事いってなかったっけ!?
 って、事は、あいつら選ばれた者(エリート)なんだ!
 私が息を潜めながら驚いていると、鳥はそのまま続けた。

『だからもう一度だけ、チャンスをあげるよ。立花圭子を拉致、出来なければ殺して来い。簡単だろ?今、君達は〝仲良し〟なんだからさ』

 声が楽しそうに、だけど、冷淡に告げた。
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