もしも私がーcasket in cremtion。
『彼女を〝裏切って〟おいでよ。任務が成功したら、二度の失敗は取り消してあげるよ。……分かってるよね?組織での二度目の失敗は、死だし、裏切りも〝死〟だよ。じゃあ、楽しみにしてるよ』
(……裏切る? 裏切るって、何? 私は、初めからあんなやつら、信用なんてしてない)
私は自分にそう言い聞かせた。
(初めから、仲間なんかじゃなかった。)
あいつらだって、見す見す危険な目にあうようなバカなことしない。
ちょっと考えれば分かった事じゃない。
(そうよ、きっと、私を殺すために初めから……)
私は何だか悔しくて、そして、悲しかった。
「主覺って、葵だろ?」
永璃の声がやけにはっきりと聞こえる。
(今のうちに、逃げよう)
諦めるように、心の中で呟いた時だった。
「無礼な!なんと恐れ多い!葵様を呼び捨てにするとは・・!!」
渋い声のディーガスと呼ばれる鳥が、わめくように声を荒げた。
そして、永璃の凛とした声が、私の耳に届いた。
「悪いがお断りする。今さら組織に戻る気は無い。少なくとも俺はな。」
「!」
私は驚いて顔を上げる。思わず、階段から顔が出そうになって、すぐに引っ込めた。
「なぁにカッコつけちゃってんの? 死んじゃったら元も子もないじゃんか!」
靭が呆れたように大げさにため息をつき、手を広げた。
(靭……やっぱり――)
諦めかけた時、靭がにやりと笑った。
「でもさぁ、お生憎様! 僕は葵に忠誠を誓った覚えなんてないんだよね。だから命令なんてきけない!」
靭の発言を聞いて、幟呉はふうっと深いため息をついた。
そして冷静に切り出す。
「お引取り願おう。そしてこう伝えてもらおうか? 俺達はあんたらに従うつもりはない、とな。」
「幟呉、カッコいい~♪ 僕らの意思は幟呉が言ったとおりだよ。」