もしも私がーcasket in cremtion。
「もう帰っちゃったのかな?」
靭がそう呟き
「さあな」と永璃が答えた時
「お疲れ様でした」
店から出ようと、後ろを向きながら店員にあいさつをする、栗色の髪の少女がすぐ側にいる。その少女はゆっくりと前を向き「お疲れ様でした」の笑顔のまま、彼らと目が合った。
「……」
ほんの一瞬、沈黙が流れ、少女は逃げた!
「確保!」
回れ右した少女を見て、幟呉は声を上げて追った。
「圭子ちゃんだ」
そう靭は呟いて、永璃は舌打ちして、圭子を追う。
圭子は脱兎の如く、店の中へ舞い戻り、定員や客を押しのけていく。
客用の出入り口から出て、焦って左右を見回し、とりあえず人ごみを縫うようにして走り出した。
(無理だよ!今までは何故かギリギリの所で変身して逃げれたけど、普通の時にあの三人から逃げられるわけない!)
圭子は、半べそになりながら、必死になって走った。
そんな圭子の目の前に、とっても見覚えのある顔が突然湧いて出た。
靭だ!と判断した時にはもう、急ブレーキがが効かずに、圭子は靭の胸へドン!とぶつかった。反動で転びそうになった圭子の腕を、靭は掴んで
「捕まえた」と口の端を歪める。
思わず圭子は、その手を下に引いて、横から振り上げる様にして、アソコに蹴り入れた。
「だ あ !!」
と靭は悲鳴を上げて座り込んだ。
その隙をついて、圭子は逃げ出した。
「何やってんだ!靭!」
後ろから来た幟呉に文句を言われて小さく「うるせえ」と悪態をつくと、幟呉のすぐ後から来た永璃に「いたそっ」と呟かれた。
この一言で、靭の目付きが変わった。
「……っ許さねえ!あの女(アマ)!」
その頃圭子は、繁華街を避けるようにして逃げていた。そのすぐ後ろからは幟呉と永璃が追いかけている。
その背後から、猛スピードで靭が
「まて!このアマあ!!」と叫びながら走ってきた。
見る見るうちに距離が縮まる。
(捕まる!)
腕を掴まれる寸前で、固く目を瞑ると、体が急に熱くなって、足が焼けるように熱くなった。
「あつ!」
思わず口から出ると、足だけが、金色のカモシカのような獣の足に変わっていた。
圭子は、掴まれた腕を振り払って高く高くジャンプした。
軽く、三階建ての屋上の上まで跳ね上がり、そのまま山の方へ向って逃げた。
残された三人は「ちっ」と舌打ちをして、ジャンプすると、圭子と同じように屋上まで跳ね上がり、圭子の後を追った。