もしも私がーcasket in cremtion。
葵翔
辺りを見回しながら歩く。
今のところ何も起こっていない。
(このまま歩いていて良いんだろうか? 皆はどうしてるのかな?)
不安に襲われながらも光の示すとおりに歩いて行くと、一つの扉が見えた。ゴクリと息を呑み、慎重にその扉を開けた。
光が差し込む。目がチカチカした。その光は何だか淡くて、目を見開いて見てみると、たどり着いた部屋は、薄暗く、狭い。
機械の上にカプセルの様な物が載っている機械があり、ずっと道なりにその機械が敷き詰めれている。
カプセルが載った機械が左右にあって、人がすれ違って通れるくらいの道が、カプセル同士の間に開いていた。
その通路は軽く右カーブしている。
カプセルは大人一人入れるぐらいの大きさだった。
私は、いったん後ろを見た。
そこには私が出てきた扉を合わせて五つあった。再び、前を向くと
「やあ。」
私の近くにある右側の機械の上に、カプセルにもたれかかって、少年が座っていた。
その少年は、黒髪に短くもなく長くもない、普通の髪型で、可愛い顔立ちをしていた。
「よく来たね。」
そう言って、少年は機械の上から降りた。私は首を傾げた。
(何だろう? この子、どこかで見た事がある気がする……誰だっけ?)
私がそう考えていると、少年は二コリと微笑んだ。
「悪いね。キミと二人だけで話がしたくて、扉を指定させてもらったんだ。」
「――って、ことは、スピーカーからの声ってあなた!?」
(ってことは、まさかこの子は……!)
「はじめまして、立花圭子さん。僕が〝葵 翔〟ここの主覺です。」
「!」
(やっぱり! でも、こんな子供が!? まだ十二、十三歳に見えるのに!)
私がこれでもかというくらい驚愕し、呆気に取られていると、その反応が気に入ったのか、とんでもなく可愛い笑顔を見せた。
「覚えてない、僕の事? まあ、ぶつかった程度だったしね。」
「!?」
(ぶつかった……? もしかして、誕生日の日にぶつかった、あの子!?)
私の様子をジッと見つめていた葵はニコリと微笑み、満足そうに
「思い出したみたいだね。」と言った。
(でも、あの子は白髪で、もう少し髪が長かったはず……。切って染めたのかな?)
そんな事を考えていると
「見せたいものがあるんだけど、ちょっとこっち来てくれる?」
と言って、顔と親指をクイッと部屋の奥に指した。そしてそのままスタスタと歩き出した。
私は少し迷ったけど、ここにいても仕方ないと思い、後を追った。