もしも私がーcasket in cremtion。
数十メートル、カプセル機械に挟まれた道を歩く。
(長方形型の部屋なんだ。横幅は狭いけど、縦は長い。意外に広い部屋だったみたいね。)
すると、機械の道が途切れて、先頭らしきカプセル機械から約五メートルの空間が、機械が置いていないせいか、開放されたような広い空間になっていた。
そして、その先には一台のカプセルと機械が置かれていた。そのカプセル機械の横、三メートルくらい離れた場所には小さな機械が置いてある。
他のカプセル機械の殆どが機械の部分しか光っていなかったのに対し、その一台のカプセル機械は、カプセル自体が淡い光を放っていた。
その下の機械の一部も、蛍光テープを貼ってあるみたいに光っていた。
そのカプセル機械の横に、葵は立っていた。
カプセル機械が途切れている場所に私は止まり、真っ直ぐ私を見つめるその一台のカプセル機械と睨めっこしていると、私はそのカプセルの違和感に気づいた。
目を擦って細めて、よく見てみる。
そして、それが見えた瞬間、私は息を呑んだ。
思わず広々とした空間に足を踏み入れる。
それでもまだ目はカプセルを見つめていた。
そのカプセルの中には、裸の女の人がいた。
その人は蹲って、酸素マスクをして、何かの液体の中で浮いていた。
私は一歩、また一歩と、そのカプセルに近づいた。もちろん、目は、カプセルと女の人に釘付けにされたままで。
半分近くまで寄ると、私は目を丸くして、また息を呑んだ。私は、女の人に見覚えがあったのだ。
「……エリス?」
「やっぱり覚えてたんだ。自分が殺した人だもんね。」
葵は感心したようにそう言うと、微笑みながら
「ちなみに、海はキミの後ろの左側、一番初めのカプセルに入ってたんだよ。そうそう、お礼言わなきゃと思ってたんだ。ありがとう。」
突然頭を下げた。
そして顔を上げると、笑顔は笑顔で、可愛い笑顔なのに、ゾッとする笑みで
「半年前、あの邪魔な刑事さん三人を殺してくれて、ありがとう。あ! でも、まだ邪魔なのが一匹残ってるんだっけ?」
そう見下すと、哄笑した。その姿を見て、私は言い知れぬ恐怖に駆られた。
(何なの? この子……。)
我に帰ったように、はたまた、思いついたかのように、葵は「あっ!ねえ」と話を切り出した。
「良い事教えてあげようか?キミにとっては、とっても良い事だと思うんだけど?」
「良いこと?」
「そう。秘密さ、とっても大事なキミの秘密。」
囁くように言って、顎に手をあてて考え込むしぐさをした。
「いや、僕のかなぁ?」
(どっちよ!?)
心の中でそう突っ込みを入れると、葵はニヤニヤ笑いながら意外な事を、あっさりと言い放った。
「実はね、彼らを殺したのって、キミじゃないんだ。」
「は!?」