もしも私がーcasket in cremtion。
「それと、柳田友未を殺した時のキミの顔ったら……笑うしかなかったね。知ってた?キミ、化け物の姿で泣いてたんだよ。知らないか、その時はまだキミ、夢の中だもんね。操られたまま泣くとは思わなかったなぁ……あの時は驚いたよ、傑作だよね!」
楽しげに歌うように語った葵の言葉は、混乱から抜け出せない私の心に沈殿していった。
そんな私を嘲笑うかのように、口の端をゆがめて近づいてきた葵は、急に声のトーンを落とした。
「でもさぁ、アンタ、柳田友未の事キライだったんじゃないの? 羨ましかったんでしょう? 憎かったんだろう? アイツの事さあ……。ねえ? 立花圭子さん。」
私の顔を覗き込んだ葵は、明らかに面白がっていた。
顔中に下卑た笑いがこびりついている。
急に湧き上がる気持ちが抑えきれなくなった。
「何?何言ってんの!?私が友未のことキライだったわけないじゃない!!」
私が怒鳴ると、葵は眉を顰めた。
そして「ふ~ん」と頷きながら
「嘘はいけないな。僕はずっとキミといたんだよ。キミの心なんて手に取るように解る。」
「嘘じゃない!ウソじゃ……ないっ!確かに、羨ましいと思った事も、何でこんなに違うんだろう?って思った時もあった。嫉妬はしてたけど、キライだった時なんて一度だってないのよ!友未はいつだって他人の事で頭がいっぱいで、何に対しても優しくて、良い子だったんだから!そんな子をキライに何てなれないでしょ!?」
「ふ~ん、良い子、良い子、ねぇ……。僕はキライだな。この世に本当に良い子何て、いないんだから。天然で「自分より不特定多数の他人が大事」なんて思ってる子何ていないよ。「自分よりキミが」とか、一対一だったら分からないでもないけどね。」
「何よ!何も分からない子供のくせに!」
「子供ねぇ、今年で二十五になるんだけどね、僕。」
ボソッと声が聞こえて来て、私は「はぁ?」と呟いた。その呟きが聞えたのか、
「冗談だよ。」
二コリと笑った。