気紛れカフェ
「た、ただいま…」

「あら、おかえり夢愛ちゃん」

「え、あ、お母さん…」

家に帰るとお母さんがいた

「夢愛ちゃん、慧君知らない?」

私はオレンジジュースを注ぐ手を止める
慧は、私のお兄ちゃんで私はにぃと呼んでいる
にぃは…私よりお母さんに愛されている
にぃは、お母さんの愛の塊だ

「知らないよー、にぃ、まだ帰ってないの?」

「えー、せっかく慧君の好きなチョコケーキ買ってきたのにぃ…」

私は笑いながらオレンジジュースを口に含む
全く味がしない、『甘い』それだけしか感じない

「あ、夢愛ちゃんの好きなチーズケーキは無かったの」

「…いいよ、ケーキって気分じゃないかったし」

私はそういうと自室へと階段を上がった
しょうがない、私は…お父さんに似ているんだから

「おとう、ただいま」

私は机の上にある写真に話しかける
その写真は私とお父さんしか映っていない
たった一枚の、お父さんとの思い出

「おとう、今日はね、悪口言われちゃった…
 でもね、その後にとっても親切な人に会ったよ」

おとうは以前、お母さんに浮気を訴えられて離婚した
でも、私はおとうは浮気なんかしていないと信じている
すると、知らない人から電話が来た
お母さんが電話に出ないから、電話に出たのは私だった

「あ、河合さんの御宅ですか?」

「はい、どちら様ですか?」

「あの、私、河合湯秋さんの後輩の中川雪と申します

「ゆあ…き…おとうの!?」

「もしかして、夢愛さん?」

「はい!」

その雪さんと名乗る女性は、私に会いたいと言ってきた
私は、喜んで会うと言い、次の日に会うことになった


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