10年の片想い
キラもいつもの椅子に座っていた。
だがその座り方は、いつもの座り方ではない。
体育の時に使う、体操座りをしているのだ。
膝を抱えるその瞳は哀しげに潤んでいて、今にも泣きそうである。
そして先ほどから何回も、溜息をついていた。
「……おい、全員戻って来い」
総長・トウヤの合図で、全員が現実世界に戻ってきた。
我に返ったカオリがお茶を冷まし終え、テーブルに置いたところで、トウヤは顎の下で手を組んで、メンバーを見渡した。
「俺、凛と美愛を手放したくないんだ」
普段無口で、滅多に口調に抑揚を含まないトウヤだが、この時ばかりは声に真剣みが増していた。
「俺、どうしても信じられねーんだ。
凛と美愛が、俺らを騙すわけねーよ」
トウヤの意見に、全員が頷いた。
トウヤは今、メンバー全員の意見を代表して言ったのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
「凛チャンと美愛チャンがさー」
「そんなこと、言うわけないよー」
双子は文だけ見ると面倒そうに聞こえるが、これがいつもの双子の口調だ。
普段無気力な双子だが、この時ばかりは真剣だった。
「ボクも同意」
前から1番2人を姫にしたがっていた言いだしっぺ・キラもテーブルを軽く叩きながら言った。
彼の声には、若干怒りを感じる。