10年の片想い
「よくそんな呑気でいられるな!
お姫ちゃんを助けようとは思わねぇわけ!?」
キラの心からの叫びだった。
かつて自分が好きだった初恋の少女とその親友を、キラは守りたかった。
例え初恋の少女が、誰を好きでも。
自分の当時の気持ちは、嘘ではなかった…と。
「確かに普通なら理事長になんて勝てねーよ。
だってボクら、本来は学校にいて良い存在じゃねーんだからよ」
生徒名簿に、乱馬メンバーの名前はない。
それは昔、1年生の時に、乱馬は三金高校を退学したのだ。
それでも成績順位に名前が入っているのは、キラを除く乱馬メンバー以上の成績優秀者がいなかったため、校長がいてほしいと頼み込んだからだ。
キラを愛する校長がいなければ、乱馬は三金高校の生徒ではなかった。
「だけど、それはボクらが一般家庭の人間だったらの話。
ボクら、普通の家庭の人間じゃないでしょ」
トウヤだけでなく、カオリもウミもソラも、キラも。
誰でも名を知る有名な家の息子だった。
「それに、ムカつかないの?
別にボクら、悪いことしていないじゃん。
理事長は勝手に、ボクらを悪者にしているんだよ?
このまま凜ちゃんと美愛ちゃんを騙したままで良いの?
本当に騙していたのは、凜ちゃんたちじゃない。
ボクらなんだよ?」