10年の片想い
憂鬱な気分のまま、校門を通ると。
生徒が全員、あたしたちに注目した。
そしてあたしたちが見渡した時、校舎の方向から理事長がやってくるのが見えた。
三金友ノ介(とものすけ)。
黒髪をワックスでテカテカにし、端っこがつりあがった銀縁眼鏡をかけている、厳しいとか頑固とか、良い噂を聞かない理事長だ。
あたしたち生徒会を敵視する、敵でもある。
理事長は気持ち悪い笑顔を浮かべながら、やってきた。
そしてあたしと美愛を、舐めるように見た。
反射的に、美愛より一歩前に出る。
「久留米凛と田島美愛、残念だな」
「…退学、ですか」
「期限内に約束を守れなかったお前らが悪い」
「どうして自分が調べられなかったからって、あたしたちを退学にするんですか」
「約束だからだよ。
約束は守るためにあるだろう?」
赤青神の総長と副総長がいるのが、許せないのだろうか。
赤青神は人のためになる族だと話しても、無駄に終わっている。
ごみ拾いや、近所で一人暮らしをする高齢者の元へ行った映像を見せても、合成だとか言って信じてくれない。
族だから。
あたしたちを敵視しているんだ。
乱馬を敵視しないのは、キラが校長の孫だから。
まぁ、仕方なく敵視していないんだろうけどね。
ごめん。
あたし、守れなかったよ。
美愛のことも、皆のことも。
オトナに、
なれなかったよ―――――。
「では約束通り、退学に―――……」
理事長が2枚の紙を開いた時。
「手ぇ出すんじゃねぇよ、俺らの姫に」
あの、かっこいい声が響いた。